しょうじきしんどい

海老で鯛を釣ろうと思う。いや、海老はもったいないからミミズでいいや。

『吾輩は猫である』の口調で、ももクロさんとの出会いについて語る

 

 

 

男祭り

 

 

吾輩は武士(モノノフ)である。

 

彼女はまだ無い。

 

どこでモノノフになったか頓(とん)と見當がつかぬ。

 

何でも薄暗い武道館で「カナコーカナコー」と泣いて居た事丈は記憶して居る。

 

吾輩は武道館で始めてモモクロといふものを見た。

 

然(しか)もあとで聞くとそれはアイドルといふ人間中で一番全力な種族であつたさうだ。

 

此モモクロといふのは「今会へるアイドル」として各所でライブをしているといふ話である。

 

然し其當時は何といふ考(かんがへ)もなかつたから別段嬉しひとも思はなかつた。

 

但(たゞ)友人の誘ひに乗せられてサイリウムを持ち上げた時何だか、ウリャオイした感じが有つた許(ばか)りである。

 

数曲を終へ、モニター上で少し落ち付いてメンバーの顔を見たのが所謂(いはゆる)モモクロといふものゝ見始(みはじめ)であらう。

 

此時妙なものだと思つた感じが今でも殘つて居る。

 

第一美しひ容子(ようす)であるべき筈の顔が、其程端麗でなかつた。

 

特に深緑の色合ひをしたメンバーの良さが吾輩には理解できなかつた。

 

其前AKB48にも大分逢つたがそんな輪郭のアイドルには一度も出會(でく)はした事がない。

 

加之(のみならず)桃色のメンバーは顔のパーツが餘りに中心に寄つて居る。

 

そうして其の口から時々「あーりんだよぉ♪」と甘つたるい台詞を言う。

 

どうも咽(む)せぽくて實に弱つた。

 

是が桃色のメンバーの決め台詞といふものである事は漸く此頃(このごろ)知つた。

 

紫紺のメンバーは顔の半分が馬のような容姿をしてひた。

 

実はモモクロの元主将だそうだが、今は見る影もなひ。

 

「感電少女」というキヤツチフレーズは、言の葉を発すると感電するといふ意味らしひ。

 

黄色のメンバーは「みんなの妹」というキヤツチフレーズを持っていたが、誰よりも背が高かつた。

 

トークは器用にこなすが、歌唱力はまだ無い。

 

但容子は最も端麗であつた。

 

紅色のメンバーがカナコーで、モモクロの主将である。

 

非常に阿房(アホウ)でメンバーから常に)「うつけではござらぬのか?」と罵られておる。

 

此メンバーでしばらくはMCタイムに入ったが暫くすると再度非常に全力で歌唱し始めた。

 

メンバーが踊るのか自分丈(だけ)が踊るのか分らない状況に眼が廻る。

 

胸が熱くなる。

 

到底盛り上がらないと思つて居ると、民から「アーヨッシャイクゾー」と音がして腹から声が出た。

 

夫迄(それまで)は記憶して居るがあとは何の事やらいくら考へ出さうとしても分らない。

 

ふと氣が付いて見るとメンバーは居ない。

 

澤山(たくさん)居つた民が一疋(ぴき)も見えぬ。

 

ライブは終わつたのだ。

 

肝心の友人さへ名残惜しそふに法被とサイリウムをカバンに隱して仕舞つた。

 

奇妙なことにモモクロと出会う前とは違つて充実感や慈愛を持つて見へる。

 

眼を明いて居(ゐ)られぬ位だ。

 

モモクロに心を奪われたそんな秋だつた。

 

ももいろクリスマス 

 

 

雪が降り始めた頃、吾輩は埼玉スーパーアリーナに居た。

 

「ももいろクリスマス」の時節である。

 

再度メンバーを此目で拝もうと思つていたが今日のメンバーは画面の上から出てこなひ。

 

遥か遠方に居るように感じられた。

 

果てな何でも容子(ようす)が可笑(をかし)いと、よくよくチケツトを見ると「ライブビューイング席」と記されていた。

 

吾輩はアリーナ席からライブビューイング会場の中へ棄てられたのである。

 

暫くして「カナコー」と泣いたらメンバーが又迎(むかひ)に來てくれるかと考へ付いた。

 

「カナコーカナコーと」試みに泣いて見たが誰も來なひ。

 

其内ライブが始まり吾輩は「ウリャオイ」と聲を出した。

 

秋頃に経たあの感覚が体内を廻つたが結局今日のライブはメンバーに会えないまま終わつた。

 

同じ建屋の中にいるのに、彼女たちには会へないのかと肩を落とす。

 

仕方がない、何でもよいから食物(くひもの)のある所迄あるかうと決心をしてそろりそろりと埼玉スーパーアリーナに背を向けて帰路につく準備を始めた。

 

どうも非常に哀しい。

 

家に帰つたら自慰行為でもして床に着こうと考へていた矢先、民から大きな聲が出た。

 

メンバーが会場を飛躍してライブビューイング会場に迎へに来たのだ。

 

吾輩は再び「カナコーカナコー」と泣き始めた。

 

クリスマスとは不思議なもので、もし此メンバーが居なかつたなら、吾輩は遂に路傍に餓死したかも知れんのである。

 

This is the message of Christmas: We are never alone

 

とはよく云つたものだ。

 

此思ひ出は今日(こんにち)に至る迄吾輩がクリスマスを迎へる度に蘇る。

 

吾輩は愛慕と畏敬の意を持ちてモモクロのことをモモクロさんと呼ぶようになつた。

 

まとめ

 

 

吾輩は武士(モノノフ)である。

 

今年、ライブに行く予定はまだ無い。

 

チケットが余ってる人がいたら譲って下さい。おねがいします。なんでもします。

ほんとにお願いします。