恋愛仮面
1.改札のヒロイン
駅の改札では毎日多くの恋愛ドラマが生まれる。
世のカップルはパートナーとの別れを惜しみ、「今日の夜はまだ一緒にいたい」とか「1つになりたい」という気持ちを抑えることができず、ハグをしたりキスをしているシーンはこれまで嫌という程見てきた。
公衆の面前でそういうことをするカップルはだいたい安い恋愛映画を見すぎたブスカップルで、彼らが主役・ヒロインを飾ってしまうのは紛れもなくミスキャストなのだが。
しかし、その場所が池袋駅の西武線改札なのか、東京駅の新幹線改札なのかによって状況は変わってくる。
遠距離恋愛では意思疎通が図りにくく、色々と自分で抱え込んでつらい思いをすることが多いのか、パートナーと会えたときの感動はひとしおで、時間制限がある中で僅かな幸せを享受できるのだろう。
僕の勤務地は東京駅なのだが、毎日その改札の近くを通っていると、別れを惜しみ、時には涙を流している人たちにも遭遇する。
僕は遠距離恋愛の経験はないが、彼らのパートナーに対する熱量には到底及ばないだろう。
何の偶然なのか、僕の周りには遠距離恋愛をしている人が多く、また実に不思議なのだが、なぜか彼らから恋愛相談を受けることが多い。
2.「弱さ」を食い物にするいきもの
そもそも僕は恋愛相談というもの自体好きでない。
不安な気持ちを吐露したい気持ちはわかるのだが、責任を誰かに押し付けるのはやめた方がいいと思うからだ。
例えば「別れるか、別れないか議論」において、判断に迷って自分では解決できなくなってしまったとき、人は第三者に答えを求める傾向が強い。
なぜなら、「決断をすること」は怖くて、自分で決断した結果の責任が自分に降りかかってくることを嫌がっているからだ。
その責任の重さはあまりにも重く、辛いことだから、他人に意見を求めてしまいたくなり、判断から逃げたくなってしまう。
最悪その判断すら他人任せになってしまう。
そう、人は弱いのだ。
僕はそうしたい気持ちもわからなくはないが、自分の人生だから最終的には自分で判断しなくてはならない。恋愛に限らず、自らの将来を決める際には第3者の意見など必要ないと考える。
高校受験や大学受験とは違って、一定の点数以上取れば合格といった’目に見える幸福と不幸の境目’がはっきりしていればいいが、恋愛には正解が無い。
当たり前のことだが、人によって幸せの形は異なる。
彼らのような恋愛プレーヤーの不安を煽る一番の原因は、不倫や浮気を大々的に報道するメディア、これが’絶対’正しいと言わんばかりの世間の価値観、どこで統計を取ったかわからないインターネット調査の結果などがある。
それらの中でも特に「占い」は最低だ。
何先年前の本の理論に基づいているか知らないが、神や仏でもないのにあたかも人の将来が見えて正解がわかったような口調でアドバイスをする会話術なんて少し勉強すれば誰でもできる。
しかし、人は弱いからそこに救済を求めてしまてしまい、祈り、捧げ、最終的に漬け込まれることで食い物にされるのだ。
誰かの価値観や正解を押し付けてくる環境に身を投じている限り、実態の無い理想のパートナー像は脳裏にこびりついて離れなくなる。
3.捨てる覚悟
自分の恋愛は自分で判断をしないと絶対に後悔すると思う。
大事なのは、「別れる、別れない」の当人同士の関係性ではなくて、自分が「納得できたか、納得できない」の自分との対話なのだ。
結局、どちらを選んでいても多少傷つくことなるとは思う。
しかし、周りの意見や一般論になんとなく流されて決めてしまった時の「選ばなかった未来の呪縛」というのは負の威力は半端ない。
新しい出会いがあっても別れたパートナーの幻影が消えず、貴重な年数を無駄にしてしまうことは往々にしてあることだ。
何を選ぶかではなく「何を捨てるか」で判断する、そして「覚悟」することが求められるのではないだろうか。
とにかく恋愛相談で僕に相談をしてくるのはやめてほしい。
君は君らしく、僕は僕らしく生きていくだけなのだから。
4.仮面舞踏会
僕にとって恋愛は9割が性欲だ。これは断言できる。
枕を交わしたいと思わせるような子でないとセッションしたくもないし、無駄な時間と労力を割くのはもったいない。
元々はこんな人ではなかったのだが、今までの恋愛経験を通じて、性欲が根底にないと相手に対する興味が失われてしまうと学んだ。
僕は女の子の感情とか人間性とか、「深いところ」にはあまり興味がなくて、見た目や性格、知性など、本当に知りたくない部分を収納し、隠すことができる「箱」に興味がある。
恐らく僕は自分自身をさらけ出して、人から嫌われていることを極端に恐れているのだろう。
だから、相手のことも外見や上っ面だけ知れれば良いのだ。
お互いに本当の自分を出して嫌われるのが嫌なら、仮面を被ったまま枕を交わせばいいし、もし気に入らなければクーリングオフで返品も可能だ。
僕はまだ僕のことを探している。僕はまだ本当の恋愛を知らない。