【免許返納】家族とは何か考えるキッカケになった件
現状を簡単に記載すると下記の通りである。
<祖父のスペック>
・年齢:86歳
・出身:樺太
・妻(僕の祖母)は10年前に他界。現在は都営住宅に1人暮らし。
・現在、地元のボランティア団体の重役を務める。
・性格は圧倒的に頑固で亭主関白。
・ドライブテクニックに相当の自信有り。
・祖母の49日が過ぎる前にどっかの女を自宅に連れ込む。←
・祖母の遺産を旅行や女遊びで全部溶かす。←
・いまだにナゾの未亡人の女(赤の他人)が家に出入りしている。←
<事の顛末>
正直、これまで僕ら家族は今まで祖父が車に乗っていることを何の気にも留めておらず、そもそも祖父の生活に興味を持っていなかった。
そんな中、祖父が今まで乗っていた車のリースが切れたため、新しく車を買うことが発覚したことが事の始まりである。
祖父の健康寿命や体調を考慮した際、‘新しく車を買う’という選択はどう考えても割に合わないのではないかという観点から、「車の金額はいくらなのか?」、「購入予定の車種は何か?」、「用途は何か?」等々事情を父がヒアリングところ下記の事実が明らかになった。
<車の購入について>
金額:不明(祖父曰く買った方が安いと言っていたが後から調べたら大嘘だった)
車種:ランドクルーザー(←)
用途:主にボランティア団体の会合に出席するため。
普通の人間であれば、
と思うのが当然であろう。もちろん僕らも例外ではない。
しかし、祖父曰くボランティア団体の会合では急な呼び出しがあるため、臨機応変に対応するには車が必要だと主張している。
86歳という高年齢にも関わらず、ワゴン車を購入しようとしている点、根拠の無いドライブテクニックへの自信で事故を起こすのも時間の問題であると悟った。
さらに、昨今の高齢者ドライバーによる事故もあるので、今が免許返納の良いタイミングではないかということで、父兄妹が再三に渡って説得をしていたが聞く耳を持たなかった。
父たちの進言では聞く耳を持たないので、僕を含む孫世代が説得にいけばどうにかなるだろう。ということで僕と姉、親戚の孫たちが登場することになった。
<僕らの本当の狙い>
僕の姉はもうすぐ結婚する。
しかし、祖父が免許を返納していないことが結婚のネックになっているということを相手方から告げられたらしい。
姉の結婚を実現させるためにも何が何でも免許を返納させないといけないのだ。
僕自身も犯罪者の孫にはなりたくない。
<説得が始まる>
最初は他愛も無い話から始まった。
それとなく池袋の事故の一件に触れてみたりしたが、自分には関係ないというスタンスで話をしていた。ここまでは想定内だ。
穏やかだけど、どこか張り詰めた空気感があって、いつ話を切り出すのか様子を伺っている感じが祖父以外の人たちの間で流れていた。
なあなあな空気を断ち切るように、ようやく姉が話を切り出した。
「実は重要な話があります。」
姉がメインスピーカーになって、これまで書いたことを順を追ってわかりやすく説明した。
なぜ車を買うのか?
それは本当に必要なのか?
公共交通機関やタクシーじゃだめなのか?
僕らでできることはないか?
しかしながら、それでも聞く耳を持たず、まだ運転したいの一点張りだった。
そこで切り札として、祖父に姉の結婚の話を切り出した。
「あなたが免許を返納していないことが結婚の弊害になっています。」
「孫として最後のお願いだから免許を返納して下さい。」
と言って姉は土下座をした。
それを見て祖父は、
「ハハッ!そんなおおげさな!大丈夫!気をつけて運転するから。」
と笑いながら孫のお願いを一蹴したのだ。
さらに、
「俺が免許を返さないから結婚しないなんて言う男なんてろくでもない。」
「俺はボランティアで人様のために生きてきた。この生き方は変えられない。」
と言ったのだ。
その発言と態度に相当腹が立ったのだが、大きく深呼吸をして冷静になり、僕は祖父に1つの質問を投げかけた。
<祖父の衝撃の一言が爆誕する>
どうやら祖父は本気のお願いであることを認知している様子が無かったので、
僕は、
「一家の主として真剣に答えて欲しい。」
「おじいちゃんの車と、娘の幸せだとどっちが大事なの?」
と聞いた。
祖父の回答は、
「車の方が大事だ。」
即答だった。
あまりの衝撃で僕の血圧は一気に上がって若干めまいがしたが、祖父の主張はまだまだ続いた。
さらに人権がどうたらとか、御託を並べていたがさらに衝撃の一言がここで生まれる。
「お前らはもう成人したからもう俺とは関係ない。
「お前らは赤の他人と一緒だ。」
僕はそれを言われた瞬間、頭の中で糸がプツンと切れる音が聞こえた。
他の親戚もハッと息を飲む音が聞こえて、空気が一瞬クリアになったような気がした。
そのあとすぐにこれまで我慢していた感情が津波のように押し寄せてきて、身体に歯止めが効かなくなって僕は、
「今なんて言った!?!?もういっぺん言ってみろ!!」
と僕は祖父に詰め寄った。
親戚は僕を制止すべく後ろから身体を抑え付けていた。
その静止が無かったら間違いなく僕は祖父のことを殴っていたと思う。
その発言は聞き間違いやい言い間違いなんかではない。何度同じ質問をしても、僕ら孫はもう赤の他人だった。
僕が好きだった祖父は紛れもない悪魔だったのだ。
<使命感が生まれる>
僕は祖父の家を飛び出して、訳もわからず涙を流した。
人様のために生きるのが俺の生き様だと?
家族より赤の他人を優先する人なんていったいどこにいるのだろうか。
祖父が大事にしていた正義だかなんだか知らないけど、そんなものを正義と認めるわけにはいかない。
その時の感情を言語化するのはとても難しいのだが、「怒り」、「後悔」、「悲しみ」、「無力」、「孤独」、を全部ぐちゃぐちゃに丸め込んだような感情だった。
何より僕の体内にも悪魔の血が通っているのだと考えるととてもではないが、正常ではいられなくなった。
祖父は認知症やボケは発症していないから、祖父の心の底から出た嘘偽りの無い言葉なのだ。
孫の土下座を見て笑っていたあの顔、言い放った衝撃的な一言、あれを悪魔と呼ばなければ何と言うのか。
冒頭に祖父のスペックを記載したが、祖父はとにかく自己中心的な考えの持ち主で86年間で起きた出来事が点と点が一気に繋がった。
正直、僕はこの悪魔を世に放ってはいけないと本気で思ったし、いち早くあの世に逝くべきだと思った。
まるである日突然大きな使命を背負うことになった小説の主人公にでもなったかのような気分だった。
そこからは不思議と冷静になって、この悪魔をどう社会から隔離するかばかり考えていて、親戚たちは目の前でいろいろ説得していたが、話は頭に全然入ってこなかった。
<説得が終わる>
正直、何がトリガーだったのかはわからないが、新しく車を購入することは止めることになった。
祖父の頭の中でどういったロジックが出来上がって判断を下したのかわからないが、気がついたら電動自転車の購入に踏み切っていた。(ナゾ)
でも、1つ言えるのは僕らはまだ赤の他人であるということだ。
この部分に関しては、一切考えを曲げる気はないようで、同じようなことをぐちぐち言っていたが次第に慣れていったので気にならなかった。(これも単純接触効果と言えるのだろうか)
まだ免許返納とまでは至っていないし、本人に対して僕らの意思がしっかり伝わっているのかすらわかっていない。
少なくとも人様の命を奪うような行為は防ぐことができた。
今後のステップとして、親世代、孫世代で定期的なフォローアップをして、本人をその気にさせること。
車に乗らない生活が身体に染みてきた頃合いを見て、免許返納させるところまでもっていきたいと思う。
<まとめ>
免許返納の交渉を通じて、祖父がとんでもないモンスターであることがわかった。
説得から2日経ったが、まだ僕の腸は煮えくり返っている。
免許返納とか言う次元じゃねえぞ!って感じだ。
「人の価値観を他人が変えることはできない」
これは事前にわかっていたことだ。
でも、僕と祖父は血が繋がった紛れもない家族なのだ。
価値観とか生き方とか人として大事にして生きていくものは全て「血」というベースを元に成り立っていると思っていた。
だからこそ「血」さえ繋がっていれば価値観だって生き方だって何でも変えられると思っていたが現実はそんなに甘くない。
血が繋がっている以上、仮に絶縁をしたあとに祖父が事故を起こしたとしても、「関係ありません」の一言では責任逃れをすることはできない。
<この記事を読んだ方へのお願い>
もし、身内で高齢者ドライバーがいるのであれば、一度免許センターや高齢者ドライバーの講習会等に足を運ぶように勧めてみてください。
また、免許返納について説得してはいるものの、なかなか納得してくれないと悩んでいる人はどうか諦めないで説得し続けてください。
「頑張って説得したけどダメだったと諦めること」は「運転を容認した」のと同義です。
身内が大きな問題を起こす前に免許返納させるのは身内の役割です。
宜しくお願いします。